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iDeCo・NISA、あなたにオススメなのはどっち?違いと特徴を解説

「なんとか投資を始めて、働く以外の収入を得たい」

「資産形成を行って結婚や子育て、老後に備えたい」

会社員として働く中で、こうしたお悩みを抱える方は多くいらっしゃいます。そうしたお悩みをお持ちの方に最適なのが「iDeCo」「NISA」といった国が用意した税制優遇制度を活用することです。

これらの制度を活用することで1000万円を超える資産を形成するだけでなく、100万円以上の節税効果を得ることも可能です。国が国民の投資を推奨するため、これらの制度で得る利益に対する税金を非課税にしているため、こうした節税効果を得ることができるのです。

この記事では

  • iDeCoとNISA、つみたてNISAの概要、違い
  • あなたにオススメの優遇制度
  • 実際に口座を開設する方法

についてご紹介します。

1.iDeCo、NISA、つみたてNISAの違い

iDeCo、NISA、つみたてNISAはいずれも税制優遇のある投資制度ですが下記のような細かい条件が異なります。

簡単にそれぞれの特徴を表すと、

  • iDeCo:行政の用意した年金に加えて、自分で運用し老後資金を準備する年金制度
  • NISA:「少額から投資を始めたい!」人を支援する制度
  • つみたてNISA:「さらに少額から、長く・コツコツ投資をしたい!」人を支援する制度

このようになります。なお、iDeCo・NISA・つみたてNISAを比較すると下記の通りになります。

(後ほどそれぞれ詳しく解説しますので、さらっと眺める程度で構いません)

  iDeCo NISA つみたてNISA
利用できる方 日本に住む20~60歳の方 日本に住む20歳以上の方
年間の投資上限額

職業や年金の種類により、14万4000円~81万6000円

120万円 40万円
運用商品 定期預金、投資信託、保険 株、投資信託、ETF、REITなど 一部の投資信託とETF
運用期間 加入から60歳になるまで(10年延長可能) 5年 20年
途中引き出し 60歳になるまで原則不可
口座開設手数料 2,829円(税込) 無料 無料
口座管理手数料 年2,004円~7,000円程度 無料 無料
税制優遇①購入時 入金額(掛金)が所得控除になる なし なし
税制優遇②運用益 非課税 非課税 非課税
税制優遇③売却して受け取る時 元本含め原則課税(退職所得控除や公的年金等控除の適用有) 非課税

非課税

1.1.iDeCo

iDeCoは一言で言うと「行政の用意した年金に加えて、自分で運用し老後資金を準備する年金制度」です。個人型確定拠出年金(individual-type Defined Contribution pension plan)の略称で、iDeCoという愛称がつけられています。

少子高齢化が進み年金制度の維持が難しくなる中で、公的年金の制度だけでは老後の生活は立ち行かなくなってきています。その中で公的年金に加えて老後の生活を支える私的年金制度としてiDeCoが存在します。

iDeCoのメリット

iDeCoのメリット

iDeCoの口座を活用して投資を行うことで、3つの税制優遇を得ることができます。

  • 購入時:掛金が全額所得控除に
  • 運用時:運用益が非課税   →事例
  • お金を受け取る時:控除により税金を抑えられる
①購入時:掛金が全額所得控除に

iDeCoの掛金は全額所得控除の対象になります。課税所得が減ることにより所得税、住民税が軽減されます。

掛金控除

②運用時:運用益が非課税

通常、投資による運用益に約20%の税金が課税されます。一方、iDeCoであれば運用益に対して税金がかかりません。

運用益 非課税

例:投資信託に対する投資によって10万円の利益が出た場合

  • 一般・特定口座:約20%の税金が課税される →約2万円が引かれ、手元に残るのは約8万円
  • iDeCo口座  :運用益は非課税 →手元に入るのはまるまる10万円
③お金を受け取る時:控除により税金を抑えられる。

受け取り時の控除

iDeCoでは60歳になったのち、運用成果を一時金または年金で受け取ることができます。一時金の場合は「退職所得控除」、年金の場合は「公的年金等控除」が適用され、税金を抑えることができます。

iDeCoのデメリット

一方、iDeCoにはデメリットも存在します。

iDeCoのデメリット

①60歳まで引き出せない

iDeCoは老後資金の用意という側面があります。そのため、60歳になるまでは原則として投資した資金を引き出すことはできません。

②口座の開設、管理に手数料がかかる

口座の開設に2,829円(税込)の手数料、口座の管理に年2000円以上の手数料がかかります。

③個別の株式には投資できない

NISAと違い、iDeCoで投資できる投資先は定期預金、投資信託、保険に制限されており、個別の株式には投資することができません。

1.2.NISA

NISAは短期的な投資向けの投資非課税制度です。NISAを活用することで株式や投資信託で得た運用益や売却益が非課税となります。

NISA

NISA口座で投資信託や株式を購入すると、最長5年間の非課税期間を得ることができます。5年保有したのちは、売却をするか、5年後に与えられるNISA口座枠に移す(※)か、特定口座または一般口座に払い出し継続保有するかを選ぶことになります。

非課税期間はiDeCoが60歳になるまで、つみたてNISAは20年間になるので、これらに比べるとNISAの非課税期間は短いです。そのため、iDeCoやつみたてNISAと比べてNISAは短期的に投資をする方(一括投資をしたい方)向けの制度になっています。

(※)ロールオーバーとは

NISAで5年間非課税期間を活用して運用を行ったのち、非課税期間が満了しても投資対象の商品を翌年のNISA非課税枠に移すことで、再度5年間非課税で運用することができます。この手続きを「ロールオーバー」といいます。より長い期間、非課税で運用を続けることができる点がメリットとなります。

ロールオーバー

NISAのメリット

NISAのメリットは以下の通りです。

NISAのメリット

①非課税枠が120万円と大きい

NISAやつみたてNISAの口座には年間に投資できる額の上限が設定されています。つみたてNISAは年間40万円までしか投資ができませんが、NISAであれば年間120万円まで投資をすることができます。

短い期間の間に、より多くのお金を投入できるのがNISAのメリットです。また、短期間に資金を多く投入できるため短期的な一括投資に向いています。

②一括投資が可能

つみたてNISAは積立投資しかできません。一方で、NISAであれば一括での投資も行うことができます。ある程度お金に余裕があり、まとまったお金を投入して投資を行いたい方にとって大きなメリットになります。

③対象商品が幅広い

つみたてNISAに比べて、NISAは対象商品の幅が広いことが特徴です。つみたてNISAでは金融庁の選択した商品にのみ投資できますが、NISAはそれよりも幅広く商品選択をすることが可能です。

特に、NISAでは個別企業の株式に投資をすることができます。つみたてNISAで選択できる商品には個別株式は存在しないため、この点は大きな違いと言えるでしょう。

④引き出しが自由

iDeCoと違い、NISAでは運用している商品をいつでも引き出すことができます。急な事情でお金が必要になったときでも安心です。

NISAのデメリット

一方で、NISAには下記のようなデメリットも存在します。

NISAのデメリット

①つみたてNISA口座との併用はできない

NISAとつみたてNISAの口座をどちらも開設することはできません。どちらか口座を自分の投資目的に応じて選択する必要があります。

②長期投資には向かない

NISAの非課税期間は5年です。その後は売却するか、5年後のNISA投資枠に移すか(ロールオーバー)、特定・一般口座に移す必要があります。

5年で非課税期間が終わってしまうため、iDeCoやつみたてNISAと比較すると長期的な投資には向いていません。

③損失が出ても損益通算はできない

通常であれば投資によって損失が生まれた場合、別の利益から損失を差し引くことで税金を減らすことができます(損益通算)。しかし、NISA口座で仮に損失が生じても、特定・一般口座とは損益通算をすることはできません。NISAの他に通常の口座でも投資を行っている方は、注意が必要です。

1.3.つみたてNISA

つみたてNISAは中長期的に投資を行いたい方向けの投資非課税制度です。つみたてNISAでは投資対象の商品が「手数料が低い」などの条件を満たしていると金融庁が判断したものに限られており、いわゆる「ぼったくり」の商品が除外されているので初心者の方でも安心して投資を行うことができます。

非課税期間が20年と長く、選択されている商品も積立・分散投資に向いたものとなっているので、中長期的に投資を行いたい方にとって最適な制度になっています。

簡単にNISAとつみたてNISAを比較すると次の通りになります。

 NISAつみたてNISA
運用期間5年20年
購入方法一括・積立積立
投資可能額年間120万円年間40万円
対象の商品個別株含め幅広い金融庁が認めたもの

つみたてNISAのメリット

つみたてNISAのメリット

①非課税期間が20年と長く、積立投資に向いている

前述の通り、つみたてNISAの非課税期間は20年とNISAに比べて長期間であることが特徴です。対象商品も積立・分散投資に向いています。

②対象商品が金融庁により選定されていて安心

つみたてNISAの対象商品は金融庁によって選定されています。販売手数料がゼロであること、信託報酬(手数料のようなもの)が一定水準以下などの条件を満たしたもののみを対象商品としているため、ぼったくりの商品を掴まなくて済む点がメリットです。

③引き出しが自由

NISA口座と同じく、投資した資金の引き出しは自由です。急な資金需要にも対応できる点がメリットです。

つみたてNISAのデメリット

つみたてNISAの場合、下記のようなデメリットが存在します。

 つみたてNISAのデメリット

①NISA口座との併用はできない

つみたてNISAはNISAと併用することはできません。自分の目的に応じて、どちらかの口座を選択する必要があります。

②一括投資はできない

NISA口座と違い、つみたてNISAでは一括の投資をすることはできません。一括投資によって短期的に大きな利益を上げたい方はNISA口座の方が向いているでしょう。

③個別株には投資できない

つみたてNISAでは金融庁により投資の対象商品が選定されていますが、その中に個別の株式は含まれていません。こうした個別株に投資したい場合、NISA口座を選択することになります。

④損失が出ても損益通算はできない

NISA口座同様、損失が出ても特定・一般口座の利益との損益通算をすることができません。

2.あなたに向いているのはどの投資?

ここまで、iDeCo、NISA、つみたてNISAそれぞれの特徴をお伝えしました。それぞれの制度が向いている方は次の通りです。

あなたに向いている投資は

  • 長期的に(老後のための)資産形成を行う →iDeCo
  • 短期的な投資、株式投資を行いたい →NISA
  • 中長期的に投資を行いたい →つみたてNISA

ちなみに私は現在つみたてNISAで投資信託を運用中です。人生の様々なライフステージに備えるという目的、そして運用中でも資金を引き出せるという柔軟性からつみたてNISA口座を活用しています。生活資金に余裕がでてきたら老後資金準備のためiDeCo口座の開設も検討しようと思っています。

2.1.長期的に(老後のための)資産形成を行うならiDeCo

長期的に(老後のための)資産形成を行いたい方はiDeCoを始めることをオススメします。

おさらいですが、iDeCoには次のようなメリットがあります。

  • 運用期間が長い(原則60歳まで)
  • 掛金が全額所得控除になる
  • 運用益が非課税

長い期間運用できる、長期にわたって運用中の税金を減らすことができるというこれらのメリットは「長期間にわたってお金を運用し、老後に備える」こととうまくマッチしています。

「老後2000万円問題を聞いて、将来に漠然と不安をもっている」

「公的な年金に加えて資金を運用し、老後の生活を豊かにしたい」

こうした方にオススメです。

ただし、

・原則60歳になるまで引き出しができない

というデメリットもあるので、預貯金に余裕がない方、結婚や出産などのライフイベントの資金準備が十分でない方は無理にiDeCoに取り組むのはあまりお勧めしません。

2.2.短期的投資・株式投資を行うならNISA

短期的に投資を行いたい方、株式投資をはじめ様々な商品を選択したい方はNISAがおすすめです。

  • ・非課税期間は5年と短い代わりに、一年で最大120万円まで投資を行うことができる
  • ・つみたてNISAやiDeCoと違い個別の株式やREITにも投資できる

NISAではこうした特徴があるために、短期的に投資を行いたい方や株式投資などの幅広い投資を行いたい方に向いています。

「手持ちの余裕資金で投資にチャレンジしたい」

「個別株の売買で利益を得たい」

「高配当株投資を行いたい」

「REITにも挑戦してみたい」

こうした要望をお持ちの方に最適です。

ただし、NISAと後述のつみたてNISAは併用することができません。NISAとつみたてNISAは自身の目的に応じてどちらかを選択することになります。

2.3.中長期的に投資を行いたいならつみたてNISA

老後とまではいかないけれど中長期的に投資を行いたい方にとってはつみたてNISAが最適です。

つみたてNISAは

  • 非課税期間が20年と長く、長期投資に向いている
  • 金融庁によって商品が選定されていて、ぼったくりの商品を掴まなくて済む
  • 手数料のかかる商品は省かれていて、初心者も安心

こうしたメリットを持っています。

「資金は潤沢にはないけど、長い時間をかけてコツコツ増やしたい方」

「結婚や子育てなどのライフプランに向けて準備をしたい」

「初心者で不安だけど、とりあえず投資を経験してみたい」

こうした方にオススメです。

ただし、つみたてNISAも投資の一種ですので、損をするリスクが存在することは認識する必要があります。

また、つみたてNISAはNISAとは併用できないので、目的に応じてどちらかを選択する必要があります。

3.iDeCoとNISA、つみたてNISAの併用は可能?

iDeCo、NISA、つみたてNISAの併用の可否は次の通りです。

  • iDeCoとNISA →〇
  • iDeCoとつみたてNISA →〇
  • NISAとつみたてNISA →×

iDeCoは他の制度と併用できますが、NISAとつみたてNISA同士は併用することができません。

iDeCoとNISA(つみたてNISA)を併用することで節税の効果をより大きくすることができます

iDeCoは60歳になるまで原則引き出しができません。また、掛金についても上限が存在します。60歳より前に資金を使いたい方やiDeCoの掛金だけでは投資として不十分に感じる方はつみたてNISAの併用がおすすめです。

一方、短期間である程度まとまった運用をしたい場合はNISAがおすすめです。

これらの制度を利用する際の注意点は、「節税効果を得ることが目的になってしまう」ことです。あくまでも資産形成の手段としてiDeCoやNISAは存在します。節税効果を得ようとするあまり無理にお金を投じてしまって生活が苦しくなれば本末転倒です。

併用の注意点

  • 生活費6か月分を生活防衛資金として貯蓄しておく
  • 月々の給与収入から生活費を引いたあまりの金額を目安に投資を行う

これらの点を意識することが重要です。

4.iDeCo、NISA、つみたてNISAのシミュレーション

iDeCo、NISA、つみたてNISAを実際に行ってどの程度の節税効果を得られるのか、どのくらい資産を築くことができるのかシミュレーションができるサイトがあります。

オススメは、下記のシミュレーションサイトです。節税額や運用結果、さらにはiDeCoとつみたてNISAを併用した場合の結果も確認することができます。

〇iDeCo・つみたてNISAシミュレーション: 三井住友銀行

https://www.smbc.co.jp/kojin/special/ideco-simulation/tax/

また、下記のサイトでは、「資産が将来いくらになるか」「目標金額に〇年で到達するためには毎月いくら積み立てる必要があるか」「一定の積立額で目標金額に達するには何年かかるか」のシミュレーションが可能です。

〇資産運用シミュレーション : 金融庁

https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/moneyplan_sim/index.html

5.実際iDeCo、NISA、つみたてNISAを始めるには?

iDeCoやNISA、つみたてNISAを実際に始める時には次のようなステップで口座を開設します。

5.1.iDeCoの口座開設

iDeCoの場合、紙の申込書を記入して申込を行います。

①申込書を請求する

まず初めに、各証券会社のWEBサイトや電話でiDeCoの申込書を請求します。

②申込書を返送する

郵送等で申込書が到着したら申込書に必要な事項を書き込み、書類を返送します。

③口座開設が完了する

加入資格の確認後、証券会社より書類が届き、手続きが完了となります。手続きの完了までには1~2か月ほどの期間がかかります。

5.2.NISA、つみたてNISAの口座開設

①WEBサイトで口座開設の申込

各証券会社のWEBサイトから、NISA口座の開設申込画面にアクセスします。

②本人確認を行う(郵送またはWEB)

オンラインまたは郵送書類のやり取りによって、本人確認と個人情報の入力を行います。

③確認後、翌営業日以降に審査が完了する

手続き、審査が完了すると口座開設が完了し、通知が届きます。WEBの場合は数日、郵送の場合は1週間程度で手続きが完了します。

6.おわりに

ここまで、iDeCoやNISA、つみたてNISAの違いやオススメの手法をご紹介しました。どれも国が用意したメリットの多い制度ですので、積極的に活用することで資産形成をの第一歩を踏み出すことができると思います。

自分にとって最適な手法を検討してみてください。

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